コロナ禍に見舞われた本屋さん、古本屋さんを助ける手立てにはどのような方法があるのでしょうか。もし、街から本屋の灯りが消えたなら? 希望を消さないための選択は今、私たちの手にゆだねられているのかもしれません。
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街から本屋の灯りが消えてしまう前に
今、全国の本屋さんを支えるためのクラウドファンディング「ブックストア・エイド(Bookstore AID)基金」が行われています。最初に声を上げたのは、「本の読める店 フヅクエ」を経営する阿久津隆さん。4月15日のツイートがきっかけとなりました。
「ミニシアター・エイド基金」すごい。早くも1億円。#どの本屋が倒れるのも嫌だ基金 、本当にできないかな・・・1人の読書好きとして、1人の著者として、僕はとてもそれをやりたい・・・賛同してくださる方、いたりしますか・・・?
— fuzkue | 本の読める店 (@fuzkue) April 15, 2020
4月30日クラウドファンディングがスタートされると、活動は一挙に広まり、一週間経った5月7日には目標金額の6000万円のうち、30%にあたる約1800万円が寄付されています。運営メンバーには発起人の阿久津さんに加え、下北沢で「本屋B&B」を営む内沼晋太郎さん、motiongallery代表の大高健志さん、編集者の武田俊さん、書店員の花田菜々子さんといった面々。新たな本との取り組みを提案し、業界でも注目されてきた方々です。今回は本屋を支えるために、力を合わせ挑んでいます。
街から本屋が消えていた
緊急事態宣言を受けて、東京都から休業要請ないし協力の要請を受けた「古本屋」。一方で「本屋」は教科書を販売するから生活必需品にあたると営業の継続が認められました。線引きには、いち庶民からすると腑に落ちない点も多くありますが、都内の実情を見てみると、商業施設内にある本屋も多く、テナントごとの休業が相次いでいたように思います。
感染防止策を講じた上での無人ワゴン販売や、SNSを使った選書サービス、ネットショップ上で独自の販売を続けるお店もありましたが、多くの本屋や古本屋は休業を余儀なくされている状態。
そこに追い打ちを掛けるように、5月4日には緊急事態宣言延長が発表。耐えるのはあとひと月か、ふた月か、それとも……。段階的に営業再開する地域も出てくる一方で、決してコロナ前には戻れない窮状を訴える声も聞こえはじめます。
賛同者には読者、作家、出版社、本屋……「本屋を支えたい」一人ひとりの力
「ブックストア・エイド(Bookstore AID)基金」はそんな現状の受け皿となる取り組みになりました。賛同者も名だたる顔ぶれです。作家や出版社、デザイナー、書評家、本にかかわる仕事をする人だけでなく、もちろん読者も……。
お店を続けていくのに必要な金額、家賃や人件費といった固定費は店によってさまざまですが「ブックストア・エイド基金」は、1書店あたりに100万円を割り当てとしています。収束が見えない今、十分と言い切れる金額でないのは推測できます。
小説家の小川洋子さんは「いい小説を書きます。それが自分にできる唯一の応援の方法ですから。」とコメントを寄せています。
現在、小川洋子さんの小説『密やかな結晶』はイギリス・ブッカー国際賞の最終選考6作品にノミネートもされています。5月19日に受賞作発表を予定していましたが、ブッカー国際賞は夏の終わりごろまでの延期を発表しました。本が手に入りにくい状況を受けてと説明にあるよう、明らかになったのは本屋がなければ、本が届かない、世界的にも共通するシンプルな事実でした。
同じように国内でも、毎年の恒例となった「本屋大賞」は、2020年4月6日に最優秀賞が凪良ゆう著『流浪の月』(東京創元社)に決まったものの、まだまだ「全国の書店員さんが本当に売りたい」という目的が達成できていません。
なぜ本屋や古本屋が求められ続けるのか。それは誰にでも開かれた「きっかけ」が、無限に存在するから。世界へ通じる入口が、街にあるから。答えも本屋の数だけ、訪れる人の数だけ聞こえてきそうです。
文化の最前線
支援先の古本屋さんの一部には、これまで取材で訪れたお店の名前も挙がっています。こうした状況下で思い出す古書店主のみなさんには、共通点がありました。それは「本のプロ」としての姿。「街に合う本」を扱う店主もいれば、お客様からの持ち込みが「店に合う本」だと喜んだ店主もいました。誰かに役立ててほしいという思いを、預かる光景を見ることもありました。いずれも店頭に並んだ本には、こだわりが詰まっていました。
頼れる街の本屋さん、古本屋さんがいかに大きな存在だったのか。ときに、扱っているのは本だけでない、時代を超えて読み継いでいきたい思いや街の文化だったのではないかと気づかれます。本屋も古書店も常に街の文化を担う存在。だからこそ、本屋や古書店が消えたなら――?
できることはそれぞれに
もちろん、本屋もこのまま指を咥えて見ているわけではありません。たとえばオンライン書店でも、応援する取り組みとして、一覧のリストが多数つくられました。(例:【子どもの本と出会うばしょ】通販など対応している本屋さんリスト)
本屋単体でリモートを活用した企画を立ち上げたり、ひとつの本屋を支えるクラウドファンディングをはじめたり。他にも、2019年には二子玉川で開催されたリアルイベント「本屋博」も、2020年は「#オンライン本屋博」として、5月5日にトークイベントを開催しました。業界や業種の垣根を超えた発信は、とても画期的なこと。
また新刊本の発売延期の知らせも多数ある中で、韓国翻訳小説を扱うCHEKCCORIは『新型コロナウイルスを乗り越えた、韓国・大邱市民たちの記録』のPDF版をオンラインで販売しました。同じく独立系書店「本屋lighthouse」でも、開催中止になった文学フリマで発売予定だった『灯台より』をPDF版として販売しています。両雑誌とも販売と同時に、各書店へオンライン販売に卸しも行っています。
先々には、政府や組織だった大掛かりな支援策も期待できますが、「今」に焦点を当てたとき、すぐに手を差し伸べることができるのは、個人にほかなりません。
3日間で1億円の寄付が集まり、大きな話題になった「ミニシアターエイド基金」。今は規模を全国の映画館に規模が拡大し、5月7日には2億5000万円以上が集まっています。背景には映画監督らの新作公開をはじめ、これもまた23199名の一人一人の力のたまものだと言えるでしょう。
未来への問いに、答える準備を
本屋さんや古本屋さんもコロナ禍によって打撃を与えられ、筆者もコロナ後の景色に、危機感をもっているひとりです。また本のある場所へ訪れて、直接本を触ったりめくったり、本に囲まれたい。いずれ未来で、子どもたちからはこんな問い投げかけられること想像しました。「なぜコロナ禍でも本屋や古本屋がなくならなかったの?」と。そのときになんと答えられるのか、今はそのときに備え、さまざまな答えを模索していきたいと思います。
繰り返しになりますが、このままでは本屋さんや古本屋さんが街から消えていくかもしれません。そうではない未来のためになにができるのか。ゆっくり読書する時間を手に入れた今。希望あるその先を想像していきたいと、強く思います。
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