今回オススメする古本屋さんは東京池袋にある「古書ますく堂」。本に関するZINE(※個人の趣味で作る雑誌)も豊富に取りそろえており、人柄のよさがにじみ出る店主がオススメする一冊は『詩のこころを読む』。
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読解力低下で失ってしまうものは
日本人の読解力が前々回4位、前回8位、そして今回15位と、どんどん下がていることを伝えるニュースがありました。スマホなしではいられない日々なのに読解力が下がっているということは、「読む」ということが文字を追うことだけではないのでしょう。もし言葉の意味を知って、理解を深められたら。モノクロの文章も、次第に色付く物語の世界へといざなってくれるものになるに違いありません。
人と本の関り方が変化しても、きっと変わらないものがある。そんな希望をもたせてくれるのが「まちの古本屋さん」です。今回ご紹介するのは、池袋にある「古書ますく堂」です。
まちの中から消えた光景、古書店の中に見る風景
東京芸術劇場周辺を中心に、再開発されつつある池袋駅西口。かつてこの近辺には古書店「近藤書店」「八勝堂書店」「夏目書房」と個性的な古本屋さんがあったらしい……。らしいというのは、1、2度訪れたかどうかで、なかなか通うことも閉店セールへ駆けつけることも叶わなかったからです。街並みは当然、古書店のない光景に様変わりして、跡地の記憶もおぼろげ。まるで「読解力」のように、失ってからその大切さに気付かされました。
さっそく池袋西武池袋線の椎名町方面へ歩いていきます。立教大学、西池袋中学校、住宅街と、ますく堂の近くにゆっくり漂う生活感。さらにお店の二軒隣は保育園。朝夕に園児たちが手を振って、店主の増田さんに挨拶をしていくのだそう。
近隣からだけでなく、古本好きからも愛される古本屋さん。店主、増田さんの人柄を含め思わず足を運んでしまう。どんなに目新しい商品や店があっても、やっぱりここに戻ってきてしまう懐かしい魅力に溢れています。
棚を整えるのはお客さま
均一棚がないところから店内に入って、まず驚くのは私がするような本の積み方(笑)。今にも崩れ落ちそうに本が積み重なっているので、ソロソロと動くしかありません。
危なくないですか、と尋ねると、「お客さんが整えてくれるから大丈夫」とのお返事。思わず倒れないように本を壁に沿わせて……と、まっすぐに整えたくなるのが人情ですが、もしかしたら崩れてしまうことを考えると、余計な手出しもできない。これがまさに古本の山。原点回帰で、鉱山でお宝を掘り進めるように、一心不乱に、ときには目移りしながらも、目当ての本を探り当てていきます。
好きなものは『ガラスの仮面』、絵葉書、広島カープ、詩
店主である増田さんの趣味がギュッと詰まった空間なのは間違いありません。壁には不朽の名作『ガラスの仮面』の複製原画や、少女漫画の数々、野球本、詩集。自宅には長年コレクションしている絵葉書もあるといいます。もともと新刊書店に勤めていた経験を活かし独立。「本にかかわった仕事をしたい」と2011年オープンさせました。バーの居ぬきをそのまま利用していた2軒隣から引越して、約2年。
また、毎回テーマを変えて座談会を行い、それを収録した冊子「ますく堂なまけもの叢書」も。座談会の主催はなんと常連客の方!
本の本、本に関するZINE(※個人の趣味で作る雑誌)も豊富。ひとり出版社である夏葉社さんの書籍や、地方のミニコミ誌まで、まさかここで手に入れられたのかと、うなってしまいます。増田さんの人柄が縁をつないでいることを垣間見ました。
オススメの一冊 好きな言葉の入門書に『詩のこころを読む』
最後に、店主の増田さんからオススメの一冊を選んでいただきました。
『詩のこころを読む』は、「自分の感受性くらい」「わたしがきれいだったころ」の一節で知る人も多い、詩人・茨木のり子さんが選出した詩の入門書。
「いろいろな人の詩が載っているから。そこから好きな詩や詩人を見つけるきっかけになる」と、お店でも在庫も切らしたことはないそう。
こうしていると、年末年始の慌ただしさにもかかわらず、古本を買い漁りたい気持ちがやってきました。いったいどういうことなのでしょう。年末に買い納め、とほくそ笑んだその翌日にはまた、買い初めでニヤリ。もちろん読み終わることもないのに。2020年は私の読解力も鍛えたい一年です。
基本情報
- 「古書ますく堂」
- 住所:〒171-0021 東京都豊島区西池袋4丁目8-20
- ウェブサイト:https://mask94421139.hatenablog.com/
- Twitter:https://twitter.com/namakemask
- 営業時間:12:00-19:00
- 定休日:不定休
店長オススメの一冊
- 『詩のこころを読む』
- 著者: 茨木のり子
- 出版社: 岩波書店
- 刊行年: 1979年10月
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