フィンランドの学校や先生の拠りどころである、フィンランド版教育指導要綱「NATIONAL CORE CURRICULUM FOR BASIC EDUCATION 2014(以下、FNBE)」。今回は「学びとは」をテーマにFNBEの第2章“The conception of learning” に書かれていることを、英語を交えて紹介します。
これまでの【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】はこちら
「学び」のコンセプト
FNBEの第2章“The conception of learning” には、以下の4つのことが書かれています。
[その1]学びにおいて子どもたちを「学びの主体」に置くこと(The National Core Curriculum is based on a conception of learning that sees the pupils as active actors.)
以前にフィンランド教育の根底にある“社会構成主義”について触れたことがありました。社会構成主義の考えが根底にある教育において、子どもや先生が言葉や体験を通して互いの知識や経験を豊かにしていくことを「学んでいる」と考えます。そこでは、先生が「よい」とする授業や教材を準備し生徒に「与える」のではなく、子ども自身が“主体性をもって学ぶ人”と捉えるのだとカリキュラムの冒頭にも表明されています。
さらに主体性をもって学び、考える際には子ども自身の言語や身体や五感、記憶や感情をフルに使うことが重要となります。「やってみたい」「あ、これ知ってる!」「気持ちいいなー」といった学ぶ際の“Positive emotional experiences”(ポジティブな感情を伴う経験)が、より深い学びや能力の向上を促進すると考えられています。
とくに学ぶということをはじめてする小学校1年生の授業では、「ポジティブであること」「楽しいこと」「わかること」が“規定のカリキュラムを消化すること”よりも優先されることもあるのです。
[その2]学びは、周囲との相互作用で起こる(Learning takes place in interaction with other pupils, the teachers and other adults, and various communities and learning environments.)
学びとはお友達や先生、他人、さらには周囲のコミュニティや環境と、学ぶ主体(=子ども)との相互作用で起きると考えられています。ただ何かを一緒にするというだけでなく、「一緒にやってみたい!」「いい結果を生むためにもっとスキルを磨きたい!」というモチベーションを軸として、ともに考え計画し、そして探求してそのプロセスを振返ることがポイントです。
協働作業のいいところは、作業の中で子どもたちが絶え間なく「自分のしたことの影響やその結果」についてフィードバックが得られる点です。さらに「答えのない問い」に対する学びは、時や場所の状況によって変化してもいいとされています。
[その3]根底にあるのは目的をもった「一生を通じた学び」(Developing the learning-to-learn skills lays the foundation for goal-oriented and lifelong learning.)
フィンランドの義務教育カリキュラムには、各教科での学びの狙いの前提として、子どもたちが身につけるべき7つのスキル(内容については後日)が設定されています。その中のひとつが“Learning-to-learn skill (学ぶことを学ぶスキル)” なのです。
学校教育の間は、教科書や先生が学びのガイドをしてくれますが、その後は自分で自分の学びの目的を設定し、自分が学びやすい方法を知り、自分で自分の学びのガイドを一生していくのです。そのためにフィンランドの学校教育では、「決まった手順で学ぶ」のではなく「学びの計画を立てること」、「知識そのもの」ではなく「新しい知識とすでにもっている知識や経験の結びつけ方を習得すること」に重きが置かれています。
小学校低学年の授業で「グループでリサーチ&プレゼンテーション」をして、うまくいかない経験(考えがまとまらない、成果物ができないなど)も「次はしっかり役割分担をして計画を立てよう」と意識するきっかけになるのです。
[その4]子どもが自分に自信をもつことを大切に(The self-image, self-efficacy and self-esteem of the pupils influence the goals they set for their actions.)
学びにはつらさや忍耐が伴うことがあります。そのようなときに自分の可能性を信じられるとハードルを越えやすくなります。そのためフィンランドの教育では、楽しくてわかりやすく学べる学習メソッドを取り入れると同時に、子どもに対する「positive and realistic feedback (基本的には肯定的に、しかし嘘を言うのではなく現実的なフィードバック)」を重視しているのです。
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以上の4つが、フィンランドの義務教育を通したカリキュラムの中で「学ぶこととはこういうことですよ」と述べられている内容です。皆さんにとっての「学ぶ」と違う点はありましたか?フィンランドの学校環境や授業内容も、すべて今回の記事のテーマである“The conception of learning” が根底にあり、そこから生まれているのです。
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