前回記事では、WRO(World Robot Olympiad)の全体像を紹介しました。競技の概要やコンテストのステージを紹介しました。コンテストのステージは、北海道から沖縄まで41地区での予選会、日本代表を決める決勝大会、そして今回紹介する国際大会があります。今回は、タイのチェンマイで11月に開催されたWRO2018国際大会をレポートします。
63の国と地域が参加する世界最大規模のロボコン
WROはWorld Robot Olympiadの略称であり、世界規模で開催されるロボットコンテストです。今回で15回目の開催ですが、WROの国際大会は毎年異なる国で開催され、開催地はオリンピックのように国際大会開催希望都市が立候補し、国際委員会へのプレゼンテーションなどで決定します。
オリンピックのように4年に1回の開催ではなく毎年開催されるので、開催地の決定も大変だと国際委員から聞いたことがあります。2017年はコスタリカで開催され、2019年はハンガリーで開催予定です。日本も2008年にパシフィコ横浜で国際大会を開催しました。
今年のWRO国際大会は、タイのチェンマイで開催されました。タイのバンコクでは2005年に国際大会を開催したことがあり、タイでは2都市目の開催となります。チェンマイはタイの北部に位置するタイ第二の都市で、お寺や自然が多く、素敵な古都。日本からは羽田・関空からバンコクで乗り継ぎ移動しました。
11月16日(金)から18日(日)の3日間に渡り競技が行われたWRO2018タイ国際大会は、過去最大の63の国と地域、486チームが参加しました。会場はチェンマイ郊外にある広大でキレイな国際展示場。ここに世界から学生とそのコーチや保護者が一堂に会します。多彩な人種や言葉が入り混じり、まさに国際大会でしか感じられないムードですが、WROでの公用語は英語なので、ルール説明や交渉などはすべて英語で行われます。
会場は4つ。「レギュラー」「オープン」「ARC / Football」そして「セレモニー会場」
大きな会場は、レギュラーカテゴリー、オープンカテゴリー、ARC/Football、そしてセレモニーが開催されるメインステージに大別されていました(関連記事)。
レギュラーカテゴリー
参加者がもっとも多いレギュラーカテゴリーは、高校生・中学生・小学生とそれぞれ10台以上のコースが設置。このカテゴリーはサプライズルールがあり、選手はそれに誰にも頼らず対応する必要があるため、選手とコーチは接触できない環境となっています。コースと選手のピットが設置された競技エリアとコーチなどがいる観客席は、通信でのコミュニケーションも禁止されています。
初日の金曜日は本番コースを使った試走が行われ、土日の2日間で計5回の競技が行われました。
オープンカテゴリー
タイ・チェンマイのお祭りで有名なランタン(コムローイ)が天井に飾られた素敵なエリアに、約100個の2m×2mのパネルで仕切られたブースが立ち並び、それぞれのチームはこのエリアを装飾し、ロボットやプラントをデモ&プレゼンします。今回のテーマは「Food Matters(食料問題)」だったため、土や水、草なども搬入され、すごいことになってました。
初日の金曜日はブースの設営が行われ、土日に審査チームが各ブースをまわり、プレゼンやデモ、そして質疑応答によって採点。
ARC、Football
アルミフレームのロボットを使った高度なロボコンである「ARC(Advanced Robotics Challenge)」と、LEGO MindStormsを使ってサッカーをする「Football」は同じエリアで開催されました。
ARCは、17歳から25歳の学生を対象にしたロボコンで、画像認識などを使ってリアルなテトリスを組み上げます。すでに大人のような雰囲気の学生が多く参加していたためか、落ち着いた感じで淡々と競技が進められていました。
一方、Footballは対戦型競技であり、小中高の区切りなく試合が行われていたため、得点が入るたびに歓喜と声援が上がっていました。
WeDo
6歳から10歳が対象のロボコンであり、2017年からエキシビション競技として開催。まだ国際大会参加は8チームと少ない状況です。今回初めて日本からも2人の小学生が参加しました。こんなに小さいうちから国際的に競う場に参加するとは、将来どんなふうになるか楽しみです。
メインステージ
会場の8分の1を占めるのは、セレモニーが開催されるメインステージエリア。初日の開会式、土曜日のフレンドシップナイト、日曜日の表彰式・閉会式がここで大々的に開催されました。
WRO国際大会での交流は貴重な体験
国際大会の醍醐味は、世界で同じ競技にチャレンジしてきたライバルであり仲間との交流。この交流を積極的に促すのがフレンドシップナイトであり、土曜日の夜に開催されました。食事や飲み物が振る舞われ、ステージではタイの舞踊なども披露。浴衣や忍者など、日本をアピールする衣装で参加した日本チームのメンバーもいました。
国旗やTシャツにサインしたり、バッチやコインなど交換する姿も多く見受けられました。フレンドシップナイトの後半は、DJがステージに上がり、会場はどデカいクラブ状態に。
このフレンドシップナイト以外でも、各競技エリアでは一連の競技が終了したあと、チーム同士が積極的に交流している姿も多く見受けられました。互いの健闘をたたえ、写真を一緒に撮影したり、ユニフォームを交換しているチームまでありました。
入賞5チームと大活躍。だが結果よりもこの体験が重要
日曜日の午前中までそれぞれのカテゴリーあでコンテストを実施。日曜日の午後には表彰式が開催され、日本はメダルの獲得は逃したものの、入賞が5チームと大活躍の結果でした。
しかし、大事なのは結果だけではありません。WRO国際大会は、世界からロボコンに挑む学生が集まり、競い・交流する素晴らしい機会。WRO国際大会に参加した学生は、帰国後にコーチや保護者から「変わった」と言われます。ハイレベルのロボットコンテストに参加し、優れたテクノロジーやスキル、作戦や現場での振る舞いを目にすることは成長のキッカケになるのです。
英語でのコミュニケーションも含めたインターナショナルな振る舞いは、参加した子どもたちの今後の目標設定や学びにおいて大きな影響を与えるのでしょう。コンテストを企画・運営する私たちも、このような機会をより多くの学生に提供できるように努めなければ、と決意した次第です。
今回は、WROの一連の活動で最高峰となるイベントの国際大会を紹介。日本の学生をこのような大会に派遣するためのスポンサーや、技術や英語のサポートや大会企画運営をするボランティアも募集しています。次回は、この国際大会に派遣する日本代表チームを決める日本決勝大会について紹介します。
WRO Japan 2018公式サイト-小中高校生のロボットコンテスト
WROは自律型ロボットによる国際的なロボットコンテストです。世界中の子どもたちが各々ロボットを製作し、プログラムにより自動制御する技術を競うコンテストで、市販ロボットキットを利用することで、参加しやすく、科学技術を身近に体験できる場を提供するとともに、国際交流も行われます。
www.wroj.org
世界の子どもたちとロボットで競おう!「WROロボットコンテスト」とはーWROロボットコンテストレポート – VaLEd.press(バレッドプレス)
STEM教育が注目されるはるか以前から、ロボットを使った教育に力を入れているコンテストがあります。WRO(World Robot Olympiad)という国際的なロボットコンテストで、日本も初回から参加。ここではそのWROがどのような競技なのかを解説します。
2004年からSTEM教育に取り組むWRO
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