伊達政宗、陰陽師の時代から深い関係。東北地方で最大の反射式望遠鏡をもつ「仙台市天文台」【日本と世界のサイエンスミュージアム】

仙台は人口100万人超えの政令指定都市ですが、そこには東北地方で最大の反射式望遠鏡をもつ「仙台市天文台」があります。実は仙台と天文は、伊達政宗のいた戦国時代から切っても切り離せない関係。いったいどういうことなのでしょうか。

  • 杜の都「仙台」には東北地方で最大の反射式望遠鏡をもつ「仙台市天文台」がある。
  • 仙台といえば伊達政宗。伊達政宗が治めた仙台藩では、天文を藩の学問として位置づけていた。
  • 仙台市天文台は1953年(昭和28年)に市民による提案と募金活動で開台(開設)。
  • 開台当時、国内で製造された望遠鏡の中では最大口径のカセグレン式41センチ反射望遠鏡を設備。
  • 反射式望遠鏡「ひとみ望遠鏡」は主鏡の口径が1.3メートルあり、東北地方で最大のもの。
  • 市街地から離れたところにあるので、帰りのバスの時刻には注意。

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杜(もり)の都「仙台」の天文台

東京駅から東北新幹線で1時間半、東北地方最大の都市であり杜(もり)の都とも呼ばれる、宮城県仙台市に着きます。人口100万人超えの市町村は全国で815市町村。その中で堂々の11位(2019年10月1日現在)を誇り、政令指定都市でもあります。

また東京から日帰りできる利便性や、東北の各地域へのアクセスもよさから、全国的な企業の地方支社や支店が集中する支店経済都市のひとつでもあります。筆者自身もときどき日帰りで出張し、今回の「仙台市天文台」も隙間時間に訪問しました。

伊達政宗の仙台藩(伊達藩)は天文が学問

仙台といえば戦国時代から江戸時代前期に仙台城(青葉城)を拠点とした伊達政宗(1567(永禄10)年〜1636(寛永13)年)が有名です。伊達政宗が治めた仙台藩(伊達藩)では、天文を藩の学問として位置づけていました。

その時代であれば、天文よりも陰陽師(おんみょうじ、陰陽道)といった祈祷や占いといった宗教的なもののほうが重要に思いがちですが、伊達政宗と関係の深い陰陽道の根底には天文学も密接に関わっており、仙台と天体は切っても切れない大切なものでした。

天球儀(国指定重要文化財)

そういった歴史的背景もあってか、仙台市天文台は1953(昭和28)年に市民による提案と募金活動により開台(開設)され、翌年に仙台市へ寄贈され、市営となりました。

開台当時、日本国内で製造された望遠鏡の中では最大口径の、カセグレン式41センチ反射望遠鏡※を備えていたことからも、設立への並々ならぬ熱意が伝わります。その後もプラネタリウム設置や太陽望遠鏡の導入など充実を図りつつ、こども宇宙館(科学館)を統合して、2008(平成20)年に現在の場所に移転しました。

※カセグレン式望遠鏡……17世紀のフランス司祭 ローラン・カセグレンが考案した反射望遠鏡

初代反射望遠鏡に使われていた鏡は大型船舶の窓ガラスを流用したもの

ところで、反射望遠鏡は鏡を組み合わせて光を集める方式の望遠鏡です。暗い星でも見えるように多くの光を集めるためには、より大きな鏡(主鏡)が必要となります。また、主鏡に用いるガラス自体の重みによる微妙な変形も観測する星の鮮明さに影響するため、ガラスに厚みをもたせるなどの工夫も必要になります。

初代望遠鏡では、当時手に入れることができ、さらにこれらの条件を満たす材料として、大型船舶の窓ガラスを流用したそうです。

初代41cm反射望遠鏡 主鏡

21個の小惑星を発見した学術的意味をもつ天文台

博物館について規定している法律「博物館法」によれば、博物館とは資料収集・保管と展示という教育目的と合わせて、資料の調査研究をするという学術目的をもつとされています。各館の研究成果は「博物館報」や各専門学会などで発表されており、新発見がニュースになることも少なくありません。

仙台市天文台も公益財団法人「日本博物館協会」に加入する天文分野の博物館ですが、その名の通り2台の望遠鏡を備える天文台でもあります。国際天文学連盟の「小惑星センター」は、天文家が新発見をした際に世界各地の天文台に確認協力依頼をできるように天文台一覧を管理しており、仙台市天文台は「天文台コードD93」として登録されています。また、天文台として2008(平成20)年までに21個の小惑星を発見しています。

惑星のサイズ比較模型

東北地方で最大の反射式望遠鏡「ひとみ望遠鏡」

この天文台が備える反射式望遠鏡「ひとみ望遠鏡」は、主鏡の口径が1.3メートルあり、東北地方で最大のものです。星の日周運動に合わせて角度を調整する赤道儀式架台はコンピューター制御で、熱雑音を防ぐ冷却CCDカメラ、光のスペクトルを元に星の原子・分子の含有を調べる可視域中分散分光器などの高度な観測装置を備えており、観測研究で利用される方に向けて詳細な装置仕様が公開されています。

この望遠鏡を用いて、幼児〜高校生向けや生涯学習のための教育プログラムを提供するとともに、天文台のスタッフによる観測や大学等との共同観測(研究)が行われています。また、原則毎週土曜の夜には、誰でも参加できる天体観望会が行われています。

東北地方で最大口径の1.3メートル反射式望遠鏡

仙台市天文台は市街地から離れたところにある

周囲の光の影響をなるべく受けたくない天文台という性質上、市街地から離れたところにあるので、とくに夕方からの観望会に参加される際には帰りのバスの時刻表の確認や、レンタカー利用の検討が欠かせません。それでも、先端的な天体観測が行われている望遠鏡を用いた天体観望は非常に貴重な機会なので、ぜひとも訪問してみてください。

シロースタット式太陽望遠鏡

基本情報

仙台市天文台

  • 住所: 仙台市青葉区錦ケ丘9丁目29-32
  • 公式サイト:http://www.sendai-astro.jp
  • 開館時間:10:00〜17:00
  • 天体観測会:土曜日〜21:30
  • 休館日:水曜日・第3火曜日
  • 見学目安時間:2.5時間(展示+プラネタリウム)
  • 入館料(展示+プラネタリウム):大人 1,000円〜小人400円
  • 天体観望会参加費:大人 200円〜小人100円
  • オーディオガイド:なし

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