毎年1月に米国のラスベガスで開催される、世界最大級の電子機器の見本市CES。2019年も1月8日〜11日に開催されました。CESについては他メディアでもいろいろと取り上げているので、ここではバレッドプレスならではの視点で、CESにおけるSTEM教育関連の話題について紹介します。
CESではカンファレンスも盛況
CESは電子機器の見本市のため、製品の展示に注目が行きますが、一方でカンファレンスも隣接の会場で随時開催されています。なかでも1月10日に行われた「Kids@Play and FamilyTech 2019」では、主にSTEM教育向けの製品を出している会社の代表が集まって、現在のSTEM教育や今後のEdTech(Education × Technology)についていろいろ話し合いが行われました。
一日中のイベントで、とても全部のお話しを紹介することはできませんが、気になったことをひとつだけ取り上げると、多くの企業が子どもにどうすれば興味をもってもらえるのか、あるいは先生がどのように使えば楽に授業を進めることができるのかなどを考えて商品をつくっていることがうかがえました。
CESで展示された製品
CESでは、STEM関連の展示が「Family&Kids Tech」のカテゴリーで展示されていました。ここでは、そのなかでも気になった製品を紹介しましょう。
Sphero
今回、もっとも大きなブースを取っていたのが、Spheroでした。Spheroは日本でもいくつか製品を発売していますが、ここでは教育向けSphero「Sphero Edu」と、先日発表になったばかりの「Specdrums」が展示されていました。
Sphero Edu
Sphero Edu は、透明のSpheroと学習向けアプリを組み合わせた、STEM教育用のロボット・トイです。Sphero自体は球体で、前後左右自由に動かせるロボットですが、それを教育用に組み直したモノです。ちなみに透明なのは、その動きの仕組みを学べるように、と言う教育的配慮からです。
Specdrums
Specdrumsは、指にはめて、色のある場所をたたくと音が鳴る楽器のようなものです。色が付いているものであれば、何でも鳴らすことができ、カラーバーのようなとこをたたけば、さまざまな音色が楽しめます。
SpecdrumsはSpheroにとって今回の目玉であり、ブースではプロの演奏家がずっと音楽を奏でていました。
Kano
Kanoは、Raspberry Piを使ってPCを簡単に組み立てることができるキットを販売している会社です。
Computer Kit Touch
小型PCをRaspberry Piを使って組み立てることのできるキットです。しかし、それだけではありません。OSは独自のKano OSが搭載されていて、組み立てて電源を入れたら、子どもでもすぐに使えるようにあらかじめセッテイングされています。最新版ではさらにタッチスクリーンになっており、できることが大幅に増えました。
Harry Potter Kano Codeing Kit
言わずと知れたハリーポッターの杖をプログラミング学習に応用したものです。杖にはBluetoothとセンサーが搭載されており、その動きをPCなどでプログラミングして、杖に送ってまるで魔法のように動かす、というものです。これはハリーポッター好きの子どもなら必ず興味を持つと思うので、ぜひ日本にも入ってきてほしいものです。
Square Panda
Square Pandaは、アルファベットのブロックと、タブレットのアプリを組み合わせた「デジタル絵本」のようなものを展示していました。ブロックを組み合わせて、正しい単語にすると、タブレットのアプリのストーリーが進んでいく仕組みになっています。タブレットの中の教材を変えれば、どんどん別の楽しみ方ができるので、子どもたちも飽きることなく楽しみながら学べそうです。
Coding Critters
個人的におもしろかったのは、このCoding Crittersでした。子どもにプログラミングを教える教材なのですが、パソコン等は一切使いません。犬などの動物の背中にあるボタンだけで操作するというもので、それを使って、一緒についている絵本の内容を再現する、というものです。つまり、2匹の犬が「連れだって歩く」のであれば、両方の犬の前に進むボタンを押し、「一匹の犬が向かってきたら、もう一匹の犬は怯えて下がる」であれば、一方の犬は前ボタン、もう一方の犬は後ろボタンを押す、と言った具合です。
これがどうしてプログラムなのかと思うかもしれませんが、「こういった行動をしてもらうためにはこのように命令する」というのはプログラミングの基本であり、この教材はそれを学ぶためにはとても最適なものと言えます。
いかに子どもに興味をもってもらえるか
他にも組立型のロボットなど、さまざまなSTEM教育向け製品が展示されていましたが、共通して言えるのは、「子どもにどうすれば興味をもってもらえるのか」という部分に注力しているということです。これは裏を返せば子ども第一でものを考えている証拠であり、日本のように「押しつけ型」の教育になっていないことが、STEM教育では一番大切なことなのかもしれません。