「NHK」といえば、テレビとラジオの公共放送をしている放送局と知られていますが、正式名称を「日本放送協会」といいます。そのNHKが運営しているのが、1956(昭和31)年に開館した世界初の放送専門博物館「NHK放送博物館」です。
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愛宕山の上にある世界初の放送専門博物館
このNHK放送博物館は、標高25.7メートルの愛宕山の上にあります。これは、日本でのラジオ放送発祥の地であることと関係しています。電波は建物や山などに遮られると弱くなってしまう性質があり、地球自体の丸さの影響でアンテナから遠いほどその影響が顕著になるので、なるべく高いところにアンテナを設置する必要があります。
1925(大正14)年当時は高い建物が多くなかったこともあり、この地が選ばれました※。公共交通機関で向かうと少し登ることになりますが、エレベーターも設置されているので、臆することはありません。
当時、NHK放送博物館候補地はいくつかあった。最終的にここが選ばれた理由は不明。
放送と通信の違い
ところで、最近は動画番組をインターネット(通信)で見ることも多いため、放送と通信の違いを意識することが減りましたが、2005(平成17)年に「放送と通信の融合」が提案されるまではひとつの企業で両方を提供することは原則禁止されていたほど、大きな違いがあります。
今でも、主に電波を用いてテレビ(受信機)に一斉に情報を送れる“放送”と、送(受)信側と受(送)信側を一対一で接続するため一斉送信に向かない“通信”では、災害時の情報伝達での優位性など明確に役割が異なる点があります。
放送の「技術」と「番組」の歴史
放送博物館では、放送に関わる装置という技術的側面と、内容・番組といった歴史・文化的側面を年代に沿って辿ります。太平洋戦争(第二次世界大戦 1941〜1945年)前後のころは、ラジオ放送が一斉に声を伝えられる唯一の手段でした。1936(昭和11)年に発生した陸軍青年将校らによる二・二六事件では、クーデター放送が行われることを警戒して、現役の放送局であった愛宕山を憲兵隊で警備を固めるとともに、投降を呼びかける放送も行われました。
また、終戦を知らせる玉音放送は、1938(昭和13)年に2代目の放送施設として竣工した「東京放送会館(NHK東京放送会館※)」にて行われました。また、初の日米宇宙中継となったケネディ大統領の暗殺事件なども含め、放送技術の発展により伝えられるようになった情報が増えたことで、放送の重要さが増してきたことがわかります。
※NHKという協会サインは1946年3月から使用。
東京タワーの正式名称は「日本電波塔」
ところで、「東京タワー」は正式名称を「日本電波塔」といいます。東京タワーができるより前は、各放送局が独自に153〜177メートルの高さの塔(タワー)を建ててアンテナを設置していました。しかし、放送範囲を広げるためにより高い塔を必要としていたことと、アンテナの乱立による景観への影響も懸念されたことから、放送局同士が共同で333メートルの塔を建てたのが、東京タワーです。
博物館の入り口右横から、東京タワーの先端が遠目に見えます。
時代とともに都心の超高層ビルが増えて来て、東京タワーから見てビルの影になる地域は電波が届きにくくなり、視聴対策としてのケーブルテレビの導入なども増えて来ました。こういったことから、より高い634メートルの電波塔として計画された「東京スカイツリー」に、2012年に役割を譲りました。現在、東京タワーは予備の送信所として一部機能を残すのみとなっています。東京タワーの現役時代に塔の最先端に取り付けられていたアンテナの一部が、今は建物入り口横に展示されています。
この他にも8K放送の体験シアターやキャスター体験などの設備も備えており、放送の歴史を知れる施設となっています。また、渋谷にある「NHK放送センター」では、現在行われている放送を中心に展示が行われていますので、ぜひ合わせて見に行ってください。
基本情報
・名称:NHK放送博物館
・住所:東京都港区愛宕2-1-1
・公式サイト:https://www.nhk.or.jp/museum/
・開館時間:9:00〜16:30
・休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
・見学目安時間:1〜1.5時間
・入館料:無料
・オーディオガイド:なし
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