​​オンラインでも子どもは夢中 CANVASが成功に導いたオンライン・ワークショップの仕組み

新型コロナウイルスの影響で、ステイホームを余儀なくされましたが、CANVASで行われていたワークショップもオンライン化を余儀なくされました。親御さんから疑問の声が出る中、CANVASはどうやってワークショップを成功させたのでしょうか?その秘策に迫ります。

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ステイホーム、どう過ごした?

みなさんはステイホームの期間をどう過ごされましたか?いま、世界中の人が極めて困難な世界共通の課題に立ち向かっています。しかし、そのような日々の中でも新しい楽しみ方を見出そうとする試みを多く目にしました。

遠隔でセッションをするオーケストラ、自宅からの参加でフェスを開催するミュージシャン。インスタで大喜利をはじめる芸人たち。オンラインだけで作成した遠隔テレビドラマまで登場。美術館はオンライン鑑賞の機会を提供し、名画のマネした写真を撮るチャレンジまで生まれる。どんな状況においても生活を豊かにする人間の創造力に、あらためて驚かされました。

私の活動もご多分に漏れずオンライン化しています。会議もシンポもイベントも。大学の授業も入試も。すべてオンライン。強制的にオンラインになってみると、その可能性にあらためて気づきます。

たとえば授業でいうと、遠方のゲスト講師を呼びやすい、質問が増える、全生徒が最前列受講状態になるなど。リアルよりも充実した講義が実現できていると感じます。今後も、授業はすべてオンラインで行う予定です。

子ども向けのワークショップ活動も状況は同じです。2002年に設立したCANVASは、子どもたちの創造力・表現力を育む学びの場づくりを産官学連携で推進しています。多様な価値観の人たちと協働して、新しい価値を創造する場としてのワークショップを全国各地で提供し、これまでに50万人の子どもたちが参加をしてくれました。

毎年開催してきた全国のワークショップを一堂に集めたワークショップ博覧会「ワークショップコレクション」には、過去最高で2日に10万人が参加します。

そんなワークショップも当然のことながら緊急事態宣言の中、オンラインに切り替えることとなりました。いま取り組んでいるオンライン活動は3種類。ワークショップのオンライン化、ワークショップコレクションのオンライン化(リアルなワークショップコレクションの配信)、そしてオンラインワークショップのコレクション(オンラインワークショップを集めたオンライン博覧会イベント)です。

今日は、ワークショップのオンライン化について紹介します。

オンラインでワークショップ

CANVASは「キッズクリエイティブ研究所」という「かんじる→かんがえる→つくる→つたえる (→かんじる)」のスパイラルを基本とする、協働で創造するワークショップシリーズを大学のキャンパスなどで展開してきました。造形、デザイン、映像、音楽、身体、デジタル、プログラミング、環境、サイエンス、数、ことば、国際交流、食など、さまざまな分野のワークショップを提供しています。こちらも対面での実施は断念。

しかし、こんなときだからこそ、自宅で過ごす子どもたちに「つくる」機会を提供できないだろうか、家族以外の人と一緒に協働する時間を提供できないだろうか。そこからオンライン企画「おうちでワークショップ」の準備がはじまりました。ご自宅に届けるワークショップキットづくり、動画作成、インタラクティブなオンラインワークショップカリキュラムの作成。私たちスタッフも初めての試みに試行錯誤の日々です。

その一方で、オンラインでワークショップ?!そんな戸惑いの声が保護者から届きます。保護者視点でいうと、本来の目的である「創造する」体験だけではなく、キッズクリエイティブ研究所に通わせる目的はさまざまです。大学という非日常空間に足を踏み入れたい、家では汚れが気になってできないダイナミックな体験をさせたい、子どもを預かってもらいたい。

正直なところ、オンラインであれば遠慮したいという連絡が多数ありました。「Zoomってなに?」「YouTubeを見るのも禁止しているため長時間映像を見せたくありません。」「リアルな場で開催することに価値があるのでは?」。

結果、4月のオンラインワークショップに参加したのは通常の参加者の1/3となりました。しかし、Zoom体験会などの提供を経て、5月には 6割の子どもたちが戻り、さらには、キャンセル枠で、リアルなワークショップでは参加が難しい地域の子どもたちからの申込みもありました。

ワークショップの流れとしては、事前にワークショップキットを配送するとともに、動画を配信し、ご家庭で制作をしてもらいます。Zoomで集まるオンラインワークショップ当日は、作品の共有と探求の時間としました。

もちろんワークショップ当日は、慣れないオンライン環境で子どもたちがリラックスして参加できるようアイスブレイクからはじめます。

「おうちの中の丸いものを探してこよう!制限時間は60秒!」おうちで借り物競走です。一斉に家中を走り回る子どもたち。セロハンテープ、キーホルダー、ボタンの穴。「まる」という視点で家の中を見渡してみると、これまで気がつかなかったことに気がつきます。「おうちにある、においがするもの」というお題では、クンクンしながら探しにいく、微笑ましい姿も見られました。

「みんなのたからものを教えて!」。おうちでShow&tell。本だったり、つくった作品だったり。子どもたちのいつもとは違う一面を知れます。

全員の画面を表示して「あっち向いてホイ」。タイミングが合わないトラブルなども含めて笑いに溢れます。もしくはアイスブレイクのお題も自分たちで考えてみる。ビデオをOFFにすることで「かくれんぼ~!」と新しい遊びを発見する子どもたちの発想はアイスブレイクネタの宝庫です。

「やじるし」のワークショップ

さて、ワークショップのお話です。

4月には深沢アートさんと一緒に、「↑↓→←(やじるし)でつくる」ワークショップを実施しました。

上、下、右、左。やじるしカードを使って、好きなものをつくります。意味があるサインとしてのやじるしが、造形をしていくうちに違う意味のあるものに変化していく。その意味の転換を、手を動かしながら楽しんでみようというプログラムです。思わずつなげたくなる、色を塗りたくなる、そんなやじるしカードを使って子どもは自由に創作します。

そして作品を持ち寄った本番。「発表したい人?」と呼びかけると、全員が手をあげます。工夫したところは?大変だったところは?一人ひとり作品プレゼンします。作品には1つ1つストーリーがあります。雷が鳴るとここに車が通ってね……。ただの矢印のカードから子どもたちの多種多様な空想が生まれるのもおもしろい。ビデオのON/OFFの切り替えで自分だけがアップに映る。まるでスポットライトがあったような特別感が生まれます。

そして他の人の工夫したポイントを聞いて自分の作品をアップデートしていきます。お互いにマネをしたり、こうしてみたらどう?など工夫し合う時間がオンラインワークショップの時間です。「自分のつくったものをシェアできることが楽しかった!」と子どもたちからの感想です。

「野草さんぽ」のワークショップ

5月のテーマはサイエンス。野草さんぽワークショップをオンラインで展開しました。子どもたちは自宅に届いたワークショップキットに入っているミッションシートを手に家のまわりのフィールドワークに出かけます。遠出はできません。自宅のまわりだけ。でもミッションが与えられることで近所の散歩が探検に早変わり。

「ハートのかたちの葉っぱを探してみよう」「つぶすとベタベタする葉っぱはないかな?」「あまいにおいの葉っぱもあるよ。見つかるかな?」「パチパチおとがする野草は?」視覚、触覚、聴覚、嗅覚。すべての感覚を研ぎ澄ませて野草を探します。

「たんぽぽって、綿毛のほうがびょーんと茎が長い。なんで?」「野草って、よくコンクリートの隙間なんかに生えている。なんで?」「ドクダミってとっても刺激的な香り。なんで?」気になったものは撮影してオンラインワークショップで共有します。お気に入りの野草は絵や言葉で表現してみます。

神戸、仙台、岐阜。全国各地から参加をしてくれているので、近所の野草限定でもたくさんの写真が集まります。今回は、飛騨高山より参加した子が発見した野草が、なんと「ヒメフウロ」(関東では見られない植物。独特のにおいがする)という絶滅危惧種だったという驚きの展開もありました。

「野草の色や形、触感など、すべてに理由があるんです。」オンラインでは講師の365日野草生活のんさんが子どもたちの疑問に答えてくれます。

「事前に親子で外に出掛けて野草探しをしたことで、通常のワークショップより、能動的にオンラインワークショップに参加できたように思います。」「普段見過ごしてしまうような植物も興味をもつようになったようで、外遊びの新たな楽しみができたように思います。」「最近、なかなか外に出たがらないので、お散歩のきっかけになりました。」保護者からはそのような声をもらいました。

次回は、オンラインワークショップを実施するに当たっての工夫についてお伝えします。

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