将来的にプログラミングの技能が重要だと多くの親はわかっているのに、子どもはなかなか興味をもってくれません。どうすれば子どもがプログラミングに興味をもってくれるのでしょうか。それには子どものモチベーションを引き出してあげる必要があります。その方法をお教えしましょう。
今日のデジタル時代において、コーディングは子どもが学ぶべき重要なスキルであるという現実に保護者や教育者たちは目を向けはじめています。しかし、ほとんどの子どもたちはコーディングに興味がありません。
Google-Gallup surveyの調査では、自分の子どもにコンピュータサイエンスを学んでほしいと思っている親は86%にのぼりますが、コンピュータサイエンスに「非常に興味がある(very interested)」と答えた学生は、わずか25%です。このギャップをどうすれば埋めることができるのでしょうか。
私たちは、Connected Learning Labにおいて、STEM教育がもっと魅力的になって子どもたちにとっても価値のあるものにするために、その方法のモデルを打ち立てようとしています。
重要なのは、コーディングに対する子どもたちのモチベーションは多様である、ということに対する理解です。単にコーディングしたいからと興味をもつ子どももいれば、友達あるいは遊びがモチベーションになる子もいるし、成績や向上心がモチベーションになる子もいるでしょう。さまざまな異なる興味やモチベーションを刺激することによって、子どもたちみんながコーディングに触れるような機会を見いだすことができるのではないでしょうか。
コーディングそのもののためのコーディング
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグといったハイテク分野における天才たちの物語を耳にしたことがあるでしょう。彼らはまさに、コーディングがしたいという理由でPCやプログラミングを愛していました。
現在のように学校でコーディングが押し広められるようになる以前は、個人的な興味から、自分自身でコーディングを学ぶ人がほとんどでした。PCマニアの文化に入り込み、個人的にコーディングに興味をもった子どもは、学校というよりもむしろ、ScratchやCode.org、Tynker、Hopscotch、Ready Makerといったオンラインのコミュニティやアプリケーションを通して、コーディングへとのめり込んでいきました。
年をとるにつれて、freecodecampのようなコミュニティに入ったり、TopCoderの大会で自分の腕試しをしたり、オープンソースのプロジェクトや自分のスキルを磨くためのキャンプに参加したりするようになるのです。
問題なのは、PCマニアの文化に入り込む子どもがほとんどおらず、またPCマニアに対する偏見によって、やる気をなくしてしまう子どもがいるということです。こういった偏見がいかに現実からかけ離れたものであるか、以前記事に書いたことがありますが、それでもいまだにコーディングに対する子どもたちの興味を奪い続けているのです。
友情や遊びのためのコーディング
自分のことをPCマニアだと思っている子どもはほとんどいないでしょうが、友達と一緒にゲームで遊ぶ子どもはたくさんいるでしょう。コーディング自体に興味がない子どもでも、もしコーディングが友達と一緒に楽しむものになれば、それがモチベーションになる余地はあります。
ソーシャルメディアの黎明期には、MySpaceのプロフィールを目立つように作り変えたいがために、htmlを学んでいる子どもがいました(参考)。最近では、コーディング教育の推進者たちが、モチベーションを刺激するためのひとつの方法として、ゲームのデザインや操作のなかに、コーディングを埋め込むツールやプログラムをつくろうとしています。
ゲームを他のものとかけ合わせることは、子どもが楽しんでできる事柄として、非常に大きな効果をもちます。ですので、(ゲームだといって敬遠するのではなく)子どもが躊躇なくコーディングを楽しめるようにしてみてはどうでしょうか。
新しく出たlittleBits Code Kitは、子どもをコーディングへと引き込むためにゲームを用いた方法としてのよい例です。子どもたちはゲームを作っていくなかでコーディングをし、また自然とコーディングしながら、ゲームを遊ぶようになることでしょう。私たちのConnected Campsでも、こういった方法を用いています。キャンプや放課後のプログラムで、マインクラフトを使ったりスクラッチでゲームを作ったりすることで、子どもたちにコーディングを紹介しています。
コーディングへのモチベーションとなる社会的活動は、ゲームだけではありません。Coding for Allプロジェクトによって資金提供がなされている National Science Foundationでは、カリフォルニア大学アーバイン校の私たちのチームが、マサチューセッツ工科大学のスクラッチチームと協同して、ヒップホップダンスの映像を作っていくなかにコーディングを織り込むという活動に取り組んでいます。この協同チームによるDigital Youth Divasのプログラムは、女の子たちがeテキスタイル(スマートテキスタイル)を通してコーディングします。ファッションや流行のためにコーディングしているのです。
キャリアのためのコーディング
Google-Gallup studyの調査の中には、キャリアとしてコンピュータサイエンスを続けていくことに興味や自信があるか、という質問もありました。コーディングを学ぶことに興味がある学生は全体のわずか4分の1であり、仕事としてコンピュータサイエンスを扱うことに興味がある学生は4分の1より少しだけ多いだけ、という結果でした。将来自分がコンピュータサイエンスを扱うだろうと考えている学生は、(偏見に反して)白人よりも黒人やヒスパニック系の子どものほうが多いという結果でした。将来のための子どもの教育の一環としてコンピュータサイエンスを考えている親も、白人よりも黒人やヒスパニック系のほうが多いのです。
2016年のGoogle-Gallup の調査によれば、コーディングは近年職業のなかでも人気のあるもののひとつであり、またコーディングに関する新しい仕事のほとんどが、科学技術分野以外の金融や製造業や医療といった領域に属しています(参考)。将来の職業に可能性としてコーディングを見据えている子どもやその家族が、コーディングを学ぶことに興味をもつのは驚くことではありません。コーディングを学ぶことは、他の科学技術などの専門職を学ぶのと同じくらい重要で、より流動性の高い社会に適応するための新しい道筋を切り開いてくれることでしょう。
キャリアに対するモチベーションは多様ですが、子どもが自らコーディングに情熱を燃やすようになるモチベーションとしては、どれも同じくらい有効です。また、クラスでよい成績をとるためにとか、経済的に豊かになるためにコーディングをはじめる子どもも、同じように情熱を燃やすでしょう。
STEM教育の方法は多様です。もし私たちがすべての子どもたちにコーディングを学んでほしいと本当に望むのであれば、子どもがあるがままでいれるように、子どもに合わせてあげる必要があるでしょう。
筆者:イトウミミ
学習科学研究者。
カリフォルニア大学アーバイン校におけるConnected Learning Labの研究室長。
Connected Campsの共同出資者(Connected Camps:オンラインキャンプの非営利実施及び子供の学習教育)
詳しくは、彼女のConnected Parentingのブログを閲覧するか、もしくはConnected Camps Newsletterに登録してください。
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