身近な食べ物でプラスチックが作れる!?フランスで行われたものづくりの祭典「メイカーフェア・パリ」【ヨーロッパのSTEM教育探訪】

毎年11月に、フランス・パリでは「Maker Faire Paris(メイカーフェア・パリ)」が3日に渡って開催されています。筆者が訪れたのは2日目。会場の雰囲気をお伝えしつつ、出展ブースの中からいくつかピックアップしてご紹介します。

見せるだけではなく、体験型ブースが多め

世界のさまざまな都市で開催されているものづくりの祭典、Maker Faire(メイカーフェア)。メイカーとは一般的にものづくりをする人を指し、その人たちが集まって自分たちの作ったモノを展示する場がメイカーフェアです。

会場はパリ市から電車で15分ほど離れたところにあるシテ科学産業博物館。シドニー・オペラハウスの屋根やポンピドゥー・センターなどのプロジェクトに携わったことで知られるピーター・ライス氏の設計ということで、ガラスと鉄を用いたとても印象的な外観の建物です。

2018年はカンファレンスも合わせると40ヶ国以上から254組が出展。ゾーン0から4まで、5つのカテゴリに分かれて、大小さまざまなブースが並んでいました。

  • ゾーン0: オーディオ、ドローン、ラボ
  • ゾーン1: デジタルファブリケーション
  • ゾーン2: 教育、ファブラボ
  • ゾーン3: 循環経済(修復、リサイクル)
  • ゾーン4: エンタメ、アート、デザイン、テキスタイル

通常の展示会だと、展示しておわり、ということが多いのですが、今回の出展者一覧を見ていて驚いたのは、その44%を占める111組の出展タイトルにワークショップありと明記されていることです。また含んでいない場合でも、「~が作れます」「~を作ろう」といった参加型の展示がいくつも見られました。公式サイトにも、メイカーフェアはイノベーションと創造性の祭典であると明記されていますが、まさにプログラムからも、出展者も来場者もみんなメイカーであるというメッセージが伝わります。

では実際に会場の雰囲気はどうだったのか。254組の中からいくつかピックアップして紹介します。

パリ発・オープンソースで使えるものづくり用のデータを提供する「Open Fabrick」

まず紹介するのは2017年に立ち上がった、ものづくりに必要なデジタルのデータを共有する、オープンソース型ユニバーサルモジュラー建築システムのプロジェクト「Open Fabrick」です。

個人でモノを作っているときのデータは、その個人しか使えないことが多いですが、それをコンポーネント化することで、広く利用可能なオープンソース・ライブラリとして提供しています。たとえば、L字型の板状のブロックを作りたいときにはレーザーカッターで使えるPDFファイルがダウンロードでき、ネジやホイールのような立体物を作りたい場合は、3Dプリンタで使えるSTLファイルが無料でダウンロードできます。

対象は子どもからシニアまで幅広く、誰もがデジタルファブリケーション・ツールを駆使して、リサイクル資材などからブロックやロボットを作れるようにサポート。

今年3月には名称をOpen Fabシステムに変更。データ提供をするだけでなく、デジタルファブリケーションを通じた学校や地域ボランティアとのつながりを構築しています。

身近にある持続可能な素材を使った「プラスチックを作ろう」プロジェクト

カラフルなビーカーを並べて子どもたちの目を引いていたのは「Cook your plastic!(プラスチックを作ろう)」です。これは、世界で汚染が広がるプラスチックの代わりになるものを作るという目的に始まったプロジェクト。テーブルの上では、コーヒーや紅茶キノコ(Kombcha)などの身近な食材を使って新しいプラスチックを生成するデモを行っていました。

このイベントに来る前に、アムステルダムのWaag(ワーグ)にあるバイオラボを訪問していたので、実際に食材からマテリアルを作る過程が展示されているのはとても興味深かったです。

二人とも学際研究者。デザインのリサーチャーと物理シミュレーションのエンジニアです。バイオ由来のプラスチックの可能性を探るためにこのプロジェクトを立ち上げました。世界各国ではプラスチックによる海洋汚染などが問題になっています。バイオ由来のプラスチックであれば、最終的には土に還るので、そのようなプラスチック汚染も防げます。個人的な活動とのことですが、「ぜひ日本でも一緒に活動しましょう」と呼びかけていました。

完成したプラスチックは伸縮性があるゴムのようだったり、薄くてセロハン紙のようなものなど、個性的なものばかり。自分の好きな食べ物を使ったらどんなマテリアルになるのか、好奇心が湧いてきます。

ガジェットからファッションアイテムへ。スマホ連動型のリュックサック「ル・ガルション」

パリらしい展示として紹介したいのは、3階奥にあるゾーン4で見つけた「ル・ガルション」。こちらはBluetoothでスマホアプリと連動するリュックサック。自転車やキックボードなどでの移動をサポートします。

肩紐の部分にLEDと振動子、スイッチや加速度などのセンサーが入っており、減速時にブレーキランプのように赤く光って後続の車に教えたり、ルート通りに走行しているか振動で通知するなどの機能があります。

注目すべきは、プロモーションの仕方です。製品そのものは光るガジェット感がありますが、Instagramアカウントの投稿を見ていると、ファッションアイテムさながらのおしゃれさです。メイカーフェアのブースでも来場者に積極的に試着を促し、ファッション性をアピールしていました。実際に背負ってみたところ、見た目がかわいいだけでなく、肩紐も幅広でリュックサックとして快適に使えそうです。

「ル・ガルション」オフィシャルインスタグラムの投稿

テクノロジーとファッションとを別々に議論するのではなく、デザインやテキスタイルといった切り口で来場者に体験させているところが印象に残りました。

こちらのプロダクトは2017年にKickstarterでクラウドファンディングを行ない、現在は自社サイトからオーダーメイド販売しています。価格は2万円からとなっています。

日本から参加していたBigFaceBoxは大人気

最後に紹介するのは、日本から出展していた「BigFaceBox」です。これまでもメイカーフェア・ベイエリアやオーストリア・リンツで開催されたアルスエレクトロニカ・フェスなどでも登場していますが、パリでも多くの人を笑顔にしていました。

日本から出展したBigFaceBoxのブース

来場者だけでなく、取材クルーまでもが入れ替わり立ち替わり顔を大きくして写真を撮っている光景には驚きました。

東京以外ではニューヨークやベイエリアに参加したことがあるメイカーフェア。都市によって全く表情が異なります。パリでは個人の作品をアピールする場所というより、参加者全員がアイデアを形にするスキルを身につけるための場所だと感じました。

2019年のパリでのメイカーフェアは、11月22日から24日の3日間。同じくシテ科学産業博物館で開催されます

基本情報

名称: Maker Faire Paris(メイカーフェア・パリ)
開催場所:
シテ科学産業博物館
30 Avenue Corentin Cariou, 75019 Paris, France
2019年度の開催日程:
2019年11月22日(金)23日(土)24日(日)の3日間
料金:
1Dayチケット 大人12ユーロ
※2019年度のチケット販売前のため、2018年度の料金を参考まで表記。
オンライン購入可。会期が近づいてから公式サイトにてご確認ください。
(上記情報は2019/4/29現在のものです。詳細は施設の公式ページをご覧ください)
公式サイト(英語): https://paris.makerfaire.com/

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