活字離れが叫ばれている昨今、たまには誰かのぬくもりを感じる「本」を探しにおでかけしてみませんか? 今回オススメする古本屋さんは東京・下北沢にある「BOOKSHOP TRAVELLER」。店主が子どもにオススメする1冊も紹介します。
古本屋にでかけよう
古本を開くと、誰かの「読んだしるし」を発見するときがあります。それは最初、落書きに見えたかもしれません。前の持ち主が残した書き込みが、自分では気づかない考え方だったと発見させてくれる「奇跡のメモ」だったことがあります。ときには思いがけず、しおり代わりに挟まれた古びた家族写真を見つけて、どんな人が読んだのだろうと想像が広がってしまったこともありました。
まちの古本屋さんは、いつの時代も人が結びつく瞬間を生み出しています。ご自身やお子さんが読んだ本を手放したのち次はどんな人に読まれるか、思いめぐらせても空想が広がります。
いつか出会う「本」を探しに、今日もお子さんと古本屋におでかけしませんか? 筆者が独自の視点からオススメの古本屋さんと店主さんが子どもたちにオススメの一冊を紹介していきます。
子どもたちにオススメの本『本屋さんのすべてがわかる本』
まずは「BOOKSHOP TRAVELLER」の店主、和氣さんに「子どもたちにオススメ」の一冊をうかがいました。
店長の和氣さんは、全国の本屋さんや古本屋さんをめぐる大の「本屋好き」。本屋にまつわる本もすでに3冊出版されています。
この本を読むと、江戸時代からの歴史を持つ日本の本屋だけでなく、世界各国で本にかかわる人たちがたくさんいることに、感嘆のため息がもれてしまいそうです。知っていそうで実はよく知らない、本屋さんについてしっかり学べる点でも優れています。
実はこの本、今回紹介する「BOOKSHOP TRAVELLER」にはピッタリの一冊なのです。というのも、ここは誰でも「本屋さん」「古本屋さん」ができる仕組みがある、とても珍しい古本屋さんなんです。
本屋を旅する、がコンセプト
東京・下北沢。改装で迷宮のようだった駅構内を抜けると、おしゃれに決めたティーンエージャーたち。古着や雑貨、ライブハウス、小劇場……まさに「シモキタ」サブカルチャーの印象が漂います。
下北沢では、まちの古本屋さんらもここぞとばかり、個性派古書店ぞろい。大人のサブカルチャーにくわしい「古書ビビビ」、海外文学に出会える「クラリスブックス」、読み物と言えば「ほん吉」、図録も楽しい「古書明日」、秘密のラボのような「DARWIN ROOM」……。作家・吉本ばななさんが下北沢の街を題材にする小説を書いたほど、街は人と本との深いかかわりが根付いているようです。
その中でひときわ異彩を放つのが「本屋を旅する」がコンセプトの「BOOKSHOP TRAVELLER」。なんと店内には、約60の本屋さん・古本屋さんが出店しているんです。
本屋のなかの本屋
「BOOKSHOP TRAVELLER」では、通路を挟んだ左右にある約60の空間で「本屋さん・古本屋さん」が開店している、「間借り書店」です。1つの本棚に並べられるのはおおよそ30冊。全国各地の店主ひとりひとりが選書した本が並びます。
古本屋さんの醍醐味は、思ってもみなかった読みたい本と触れ合うこと。筆者にとって、想像もしない本との出会いのきっかけがたくさんあるということだけで、とても贅沢に思えます。
さらに約60もいる店主も十人十色です。全国各地の本屋さん、古本屋さんだけでなく、出版社やオリジナルで作った本を売るという方も。「この本を読んでほしい」、そんな熱い思いとともにバラエティーに富んでいました。
手に取ってもらうには……
コンセプトのとおり、「旅するように」眺めていくと、並べる本にワンテーマを設けていることがわかります。
タイトルに「ある」という文字が入っている本をテーマに並べた店主さんも過去にいて、想定外のおもしろい発想に、なぜそのテーマに決めたのか聞いてみたくなります。
お店を訪れてはじめて知る古本屋さんもあったり、このお店でしかオープンしていない個人の古本屋さんもあったり、見ていて興味が尽きません。
「古本屋さん」になって、本に触れ合う
もし売った本がどんなふうに手に取られていくか、お子さんと一緒に小さな「古本屋さん」をオープンしてみるのも、とてもおもしろいチャレンジになりそうですね。約60の店主もどうしたら本を手に取ってもらえるか、個性を出して、並べる本のテーマを変える工夫や、POPをつける試行錯誤もしているようです。
今後、間借りができる本棚はこれからも手作りで増やし、約100までは増やしていくそう。店主同士の交流もあるそうで、ここで古本屋をはじめてから、ますます本が好きになったという店主もいました。
本屋さんを知ると、ますます「本」に触れたくなるもの。「BOOKSHOP TRAVELLER」では、本好きの人はますます、まだの人は少しだけ本を好きになっていくようです。