オンラインワークショップの成功例から学ぶ 対面授業とは違う3つのポイント

前回、コロナ禍で実施したオンラインワークショップについて紹介しました。初めてオンラインワークショップを実施してみると、当然ではありますが対面と同じようにはいかず、「カリキュラム」「運営」「ファシリテーション」の3点において、オンライン向けのつくり変えが必要であることに気がつきます。

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「カリキュラム」のつくり替え

「カリキュラム」に関しては、すでにアナウンスしていたワークショップをオンライン化する方針をとりましたが、結果としては大幅につくり変えました。対面と同じようにできないわけですから、「家から」「オンラインで」参加する“よさ”を引き出せるワークショップにしなければ、質の下がった代替にしかならないからです。

ふだんのワークショップでも、気をつけていることがあります。それは「ワークショップはきっかけの提供である」ということ。子どもたちが、その後どのような行動につなげていくかが大事です。

普段のワークショップは、よくも悪くもオン・オフが生まれます。子どもたちからすると、非日常のイベントに参加しているのです。

しかし、家から参加するオンラインワークショップは日常の延長。そうであれば、きちんと日常の中に溶け込めるワークショップをデザインしようと考えました。家の中にある身近なものを活用し、ワークショップ後もそのまま試行錯誤を続けられるようなワークショップです。

ワークショップの前後の時間も含め設計をすることで、「探求」が続くカリキュラムにしました。実際、オンラインワークショップの後に、もう一度野草の散歩に出かけた子どもたちもいました。

ただし、ワークショップ前後の「遊びと学び」に親が巻き込まれるこのやり方には、メリット・デメリットがあります。それは保護者のアンケート結果に如実に現れています。メリットは、親子のコミュニケーションが生まれること、デメリットは親の負担が生じることです。

しかし今後もCANVASでは、「日常の見方が変わる」「日常の中で探求が育まれる」「親子コミュニケーションが生まれる」、そしてもう1点付け加えるならば「さまざまな場所からの参加者がいるメリットを活かす」ことを大事にした、オンラインワークショップをつくっていきたいと思います。

「運営」のつくり替え

次に「運営」に関してです。これはあくまでも初めてのトライアルでの感想にすぎませんが、オンラインでは60分が限界です(対面のワークショップは120分)。60分でも、連続は難しい。しかし、「10秒間、目をつむってみる」といった一息つく時間を設けることで、気持ちが切り替わります。

また、CANVAS設立時、子どものワークショップは無料で実施される傾向があった中で、継続して実施するために、CANVASでは有料で実施することにしました。今回も同じように、オンラインだからと無料の流れができると、継続性が難しくなるため、リアルなワークショップと同じように、参加費に5000円をいただくことにしました。

そこで、金額に見合う満足度を生み出さなければなりません。そのため、すべての子どもたちとの双方向のコミュニケーションを設計する必要があります。そうすると、1つのオンラインの部屋に、10名以上は厳しいことがわかりました。そして、1部屋にファシリテーターは2名必要です。進行をする講師役と、子どもたち全員の様子を観察して、適宜声をかける伴走役。伴走役のファシリテーターが、機材対応もつとめる体制で実施しました。

しかし今後は、通常通り、30人近くの参加者でオンラインワークショップが実施できるような設計を考えていきたいと思います。それが、学校でのオンライン授業の参考にもなるのではないかと考えます。

なお余談ですが、「仮想背景の利用までをインストラクションに入れてほしい」という声がありました。オンラインワークショップを実施すると、家庭の様子が丸見えです。仮想背景の導入は必須だと感じます。

「ファシリテーション」のつくり替え

最後に「ファシリテーション」です。オンラインでは、対面と違い、身体的に寄り添うことができません。空間の隔たりのぶん、気持ちの隔たりも生まれるのも事実です。伴走役のファシリテーターが、常に全員に気を配ることが大事です。そして、必ず名前で呼びかけることも、リアルなワークショップ以上に大事です。

その一方で、オンラインという存在がファシリテーションなしで議論を活発化させる効果があることも実感しました。それは大学の授業も同様です。とにかくたくさんの質問・意見が出ます。

保護者からも「初対面だと話せないのにたくさん質問できた」「以前なら恥ずかしがって、親に質問させていたが、(オンライン)ワークショップでは質問や発言ができ、自信になったようだ」といった声が届きました。

オンラインでのファシリテーションの仕方は、これから模索していきたい課題です。

双方向でアウトプットができる機会を増やす

オンラインワークショップ実施後に寄せられた感想には、「早くリアルなワークショップを再開してほしい」という声も、もちろん多数ありましたが、その一方で「想定していたよりもずっと楽しかった。」「自粛があけても、オンライン参加できるプログラムがあると、場所や時間で諦めていたプログラムへの参加ができるかもと期待している」といった声ももらっています。

自粛期間ならではではありますが、「家族以外のコミュニケーションが少なくなっていたので気分転換になった」「読書や家庭学習、動画配信など、一方通行のインプットが増えてしまっているので、今回のように双方向でアウトプットができる機会が増えるとありがたい」といった声は、今回のオンラインワークショップの狙い通りです。

CANVASは、新たに「うちのなかのひみつきち」プロジェクトとして、今後もさまざまなオンラインワークショップを展開していきます。

たとえば、ファッション。家にある洋服も着方次第で新しいファッションに早変わり。コスチュームデザインのワークショップをオンラインで行います。

そして、これから一番力をいれていくのがSTEAM。リアルな場とオンラインをいったりきたりしながら、自分でテーマを決めて創作に取り組むオンラインSTEAMラボを開始します。お楽しみに。

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