興味のもてるプログラミング学習をしてほしいーー私が公立小学校でSTEM授業をした理由[後編]

2020年のプログラミング教育必修化に先駆けて、栃木市立国府南小学校では4~6年生向けのプログラミング授業が行われました。ここではその取り組みについて、体験談を交えて紹介します。
後編ではいよいよ実際にモノをプログラミングで動かしてみます。

のせラジ「カー・キット」の製作

さて、ここからはちょっと工作の時間です。昔はプラモデルがブームだったり、欲しいおもちゃを買ってもらえなくてダンボールや空き容器などで自作してみたりと、普段の遊びの中でも「ものを作る」ことも多かったでしょう。
そのような体験が失われつつある今の子どもたちにも、プログラミングだけでなく「ものづくり」全体に興味をもってもらいたいと思い、筆者のワークショップではこのような「工作の要素」を取り入れています。

まずは、次のフィジカル・プログラミングで動かすプログラミング教材「のせラジ」を組み込んだ車キットを組み立てます。「のせラジ」は工作したものに載せるだけで、タブレットからプログラミングで操作できるデバイスです。

あえて組み立ての説明書は用意せずに、組み立て済みの車キットを目の前に置き、それをよく観察してもらって、友達同士で教え合いながら組み立てていくという方法をとりました。

工具や接着剤も使わずに12ピースほどの板を組み合わせるキットですが、子どもたちは思いのほか戸惑っている様子で、こちらの想定した時間をずいぶんとオーバーしていました。

よく観察して同じように組み立てることで理解を深めてもらいたいと思い、この方法をとったのですが、限られた時間の中では、組み立て説明書などを使うべきなのか、あるいは時間をとってでも子どもたちに考え抜いてもらったほうがいいのか……、悩ましい課題です。

友達と相談しながらの組み立て

フィジカル・プログラミング

「フィジカル・プログラミング」とは、現実世界で実際にモノを動かすためのプログラミングのことです。

2020年からのプログラミング教育で小学校では「身近な生活でコンピューターが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと」(※1)が育成するべき資質や能力とされています。パソコンやスマートフォンの画面の中だけでなく、身の回りの多くのものにコンピューターが使われていることを学ぶためにも、プログラミングとリアルな世界をつなぐフィジカル・プログラミングが効果的なのです。

またプログラミング教材を利用することは、子どもたちの興味を持続させやすいだけでなく、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)を横断的に学習するSTEM教育との親和性も高くこれからの主流となるでしょう。

先ほど組み上がった車に のせラジを載せ、タブレット・プログラミングで使った「Swift Playgroundsアプリ」で、のせラジ専用コンテンツを読み込むと、タブレット画面上でバイトくんが歩いたように「moveForward」「turnLeft」などのコマンドで、指示通りに車が走ります

画面の中の2D世界とリアルな世界がシームレスに継ぎ目なく体験できるので、容易にフィジカル・プログラミングに入っていくことができます。

やった、車が動いた !!

自分の書いたプログラムで車が動き出したときの「おおっ!」「動いた!」との声がアチコチで上がるのはいつでも印象的で、「はじめてやったけど最後まできちんとできた」「難しかったけど面白かった」という感想を聞くと、プログラミング体験を通して児童の自己肯定感の高まりに貢献できたかなと感じます。

車が動き出したら、画用紙の上にケーキやプレゼント、家などのシールを貼り付けて「ケーキとプレゼントを買って、ホームパーティーに行こう」というようなストーリーを用意し、順番にシールの上を通過するプログラミングにチャレンジ !!

その後、子どもたちが自らが考えたストーリーをシールなどで表現して、より能動的にプログラミングを楽しむところまでやりたかったのですが、今回はその前に時間切れ、残念。

興味のもてるプログラミング学習を

今まで「プログラミング・ワークショップを開催、参加者を募集します」とプログラミングに興味のある子どもや保護者を対象に活動してきた中で、都心と栃木とでは、プログラミングに対する反響の大きさが明らかに違うことを感じていました。

今回ははじめての公立小学校で一般児童への授業、そして場所は栃木ということで「プログラミングに興味のない子も多いだろうなあ」といくらかの不安を抱えて授業に臨んだのも事実。ですがその不安は見事にハズレて、どの子も休憩時間でも席を立たず、学年も男子も女子も関係なく最後まで集中して取り組んでいました。

一方、工作のフェーズでは「観察して同じように組み立てる」というパズルを解くような場面で苦戦する子も多かったので、このあたりの誘導のさじ加減は今後の課題となりました。

今回は「プログラミングという言葉をはじめて聞く子でも、最後まで興味をもって授業に参加する」というのが大きな目標でしたが、それは達成できたと自負しています。やはりSTEMをベースにしたリアル体験が、子どもたちの興味をひきつけるのではないでしょうか。

oneclass「プログラミング体験授業」-小規模特認校の体験型の授業-

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※1 文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」

(写真提供 : oneclass、ブレーメンデザイン)